3Dモデリング・CG制作委託— 修正回数とやり直し
公開: 2026年9月2日
3DモデリングやCG映像の委託では、ポリゴン数・テクスチャ解像度・リギング仕様の変更が、見積もり工数を大きく上振れさせることがあります。
「少し直して」がトポロジ変更やUVの作り直しに発展すると、受託者側は当初スコープ外と判断し、発注側は無償修正の範囲内と捉えるズレが起きやすいです。
本記事では、修正回数とやり直しの線引き、検収段階の設計、取適法・フリーランス新法の観点で発注側が押さえる実務を整理します。
トリカク(torikaku) は発注書面・受領日・支払期日を台帳で管理し、段階納品型のCG案件でも期日超過を可視化します。
1. 制作パイプラインと検収段階
1-1. ブロックアウトから最終データまで
一般的な3D制作は、ブロックアウト・ハイポリ・リトポ・UV・テクスチャ・リギングなど段階があります。
各段階の承認を検収の区切りにするか、最終納品一括検収にするかを契約で決めます。
段階検収なら、承認日を受領日として台帳に記録し、部分払いの設計と整合させます。
1-2. レビュー用ファイルと納品データ
レビュー用のスクリーンショットや軽量FBXと、納品用のマスターデータは別物として扱います。
レビュー承認だけでは検収完了にせず、契約どおりの形式・命名規則のファイル受領を完了条件にします。
ゲーム向けアセットの段階検収はゲーム開発委託のスプリント払いと検収も参考になります。
1-3. LOD・バリエーションの範囲
LODモデルや色違いバリエーションを何体まで含むか、契約の納品物一覧に数字で書きます。
「同じ型で色替えだけ」でも、テクスチャ作業が発生する場合は工数に反映させます。
2. 修正と作り直しの境界
2-1. 微修正と構造変更
テクスチャの色調整や法線の軽微な修正は、無償修正枠に含める設計が多いです。
骨格比率の変更やポリゴン構成の作り直しは、修正ではなく再制作として追加見積もりが必要です。
境界の例示を契約別紙に書いておくと、現場の判断がぶれにくくなります。
2-2. 仕様書・参考資料の変更
制作途中で参考資料や寸法仕様が変わった場合、変更依頼書で追加報酬・納期を合意します。
記載事項の型は記載事項のテンプレートをベースに、変更履歴を台帳に残します。
2-3. エンジン・プラットフォーム要件の追加
Unity向けからUnreal向けへの作り直し、モバイル向け最適化の追加など、技術要件の変更は別スコープです。
当初見積もり時点のターゲットプラットフォームを書面に固定しておきます。
2-4. 納品後の軽微調整
納品後1週間以内の色味微調整を無償枠に含めるか、契約の瑕疵対応期間で扱うかを事前に決めます。
検収完了後の調整は「追加修正」として別見積もりにする設計もあり、曖昧にすると受領日確定後も工数争いが続きます。
量産用LODモデルでは、同一キャラの衣装差分だけ別発注に分けると、検収・受領日・支払を体系列で管理しやすくなります。
3. 素材・再委託・権利
3-1. 外部モデル・素材の利用
素材ストアのモデルやスキャンデータを組み込む場合、ライセンス条件と改変可否を契約に触れます。
発注者提供か受託者購入かで、費用負担と権利関係が変わるため、一覧で管理します。
3-2. リギング・モーションの再委託
モデリングとリギングを別業者に分ける場合、各契約で検収・受領日を個別に記録します。
一括で「CG制作費」として処理すると、どの給付の60日起算か追えなくなります。
3-3. ソースファイルの帰属
.blend・.ma・.maxなどのソース納品を求める場合、納品物一覧に明記します。
著作権・利用範囲は著作権・IP委託の取適法確認の整理も参照してください。
4. 支払・検収と60日ルール
4-1. 段階払いの設計
着手金・中間金・残金の割合と、各段階の検収条件を発注書面に書きます。
中間検収後に受領日を記録し、支払60日ルールの起算点から期日を計算します。
4-2. 検収保留と瑕疵対応
ポリゴン数超過や命名規則違反など、契約違反がある場合は検収保留の理由を記録します。
保留を理由に報酬を一方的に減額することは、買いたたき禁止の観点で慎重に判断します。
4-3. 納期遅延時の合意
納期遅延が常態化する場合、納期短縮や減額を一方的に求めず、双方の書面合意で対応を決めます。
遅延の事実と原因を台帳・メール履歴に残します。
5. 実務シナリオ
5-1. テクスチャ承認後にデザイン変更
テクスチャ段階で承認した後、全体のデザイン方向を変更する依頼が入ったとします。
承認済み段階の作り直しは追加発注として見積もり、着手前に変更依頼書を起票します。
承認後の変更を無償修正に含めるかどうかは、契約の修正定義に依存します。
5-2. 複数アセットの一括発注
20体のキャラモデルを一括発注する場合、体ごとに検収するか、バッチ単位かを決めます。
完成順に受領日を記録すれば、早く完成した分から支払期日を起算できます。
5-3. 映像制作との連携
CGモデルを映像パイプラインに渡す場合、納品形式と引渡し日を映像側の契約と整合させます。
映像委託の検収整理は動画編集・映像制作発注も参照してください。
5-4. AR/VR向け最適化
AR表示用にポリゴン削減・テクスチャ圧縮が後から必要になる場合、当初見積もりのターゲット(モバイルAR等)を契約に書いておきます。
最適化だけ別発注にする場合、元モデルの検収完了日と最適化版の受領日を台帳で分け、60日起算を混同しないようにします。
よくある質問
Q. 無償修正は何回までが一般的ですか
業界慣行は案件により異なります。回数か工数か、どちらかで上限を契約に明記することが重要です。
「納得いくまで」は双方の認識ずれを招きやすい表現です。
Q. スキャンデータの加工は別料金ですか
スキャン自体を委託するか、既存スキャンのクリーンアップのみかでスコープが変わります。
見積もり段階で作業範囲を書面に固定してください。
Q. 納品後にバグ修正を求められますか
契約上の瑕疵対応期間と、仕様変更は別物です。
瑕疵期間内の修正と、新要件の追加を契約で区別します。
Q. 海外の3Dスタジオへの発注は取適法の対象ですか
取引の実態・当事者の位置づけによります。
国内向け役務提供として整理される場合は、書面・支払期日等の遵守が求められます。
Q. 試作1体だけ先に発注する場合の注意は
試作と量産本体を別契約に分け、試作で確定した仕様を量産契約に引き継ぎます。
試作費用を量産に充当するかも書面で決めます。
まとめ
- 制作段階ごとに検収・受領日を切り、修正と作り直しの境界を契約別紙に例示する
- 無償修正は回数か工数で上限を設け、仕様変更は追加発注として書面化する
- 再委託・素材ライセンス・ソース帰属を納品物一覧とセットで合意する
- 段階払いと受領日記録をセットで運用し、60日起算の起点を明確にする
6. 3D・CG委託の発注前チェックリスト
- 制作パイプライン各段階の検収タイミングを定義したか
- 微修正と構造変更の境界例を契約別紙に書いたか
- ターゲットプラットフォーム・ポリゴン上限・納品形式を明記したか
- 外部素材・再委託の可否とライセンス条件を確認したか
- 段階払いと各段階の検収条件を発注書面に含めたか
- 適用判定を発注コンプライアンスのチェックリストで実施したか
レビュー承認と最終納品データの受領を混同していないか、検収時に確認します。
変更依頼が口頭だけで増えていないか、週次で台帳と突合してください。
注意
本記事は取適法・フリーランス新法に関する一般的な情報の整理であり、トリカク(torikaku) の機能説明を含みますが、法的助言ではありません。
個別の契約内容・取引実態については専門家にご確認ください。