再委託禁止・孫請け確認— 実務チェック
公開: 2026年9月2日
システム開発や制作委託では、受託者が第三者に作業を回す「再委託」や「孫請け」が問題になります。
発注側が知らないうちに下請構造が増えると、品質管理・秘密保持・取適法上の書面義務の対象が曖昧になります。
本記事では、再委託禁止条項の設計と、孫請けを見抜く実務チェックの型を整理します。
1. 再委託と孫請けの違い
1-1. 再委託とは
再委託は、受託事業者が発注者の承諾なく、契約した業務の全部または一部を第三者に委託することを指します。
契約書に「再委託禁止」と書いてあっても、実態として外部パートナーが納品物を作っているケースは珍しくありません。
1-2. 孫請け(下請の下請)とは
孫請けは、直接契約している受託者のさらに下の事業者が作業を行う構造です。
発注者から見えるのは一次受託者だけですが、実際の作業者は別法人・別個人である場合があります。
取適法の書面交付義務や支払期日は、下請構造ごとに関係が生じるため、構造の把握が重要です。
2. 契約条項で押さえるポイント
2-1. 事前承諾と届出義務
再委託を完全禁止するか、事前書面承諾を条件とするかを明確にします。
承諾する場合でも、再委託先の名称・業務範囲・秘密情報の取扱いを個別に記録する条項を置きます。
基本契約と個別発注の関係は基本契約と個別発注も参照してください。
2-2. 秘密保持・個人情報の連鎖
再委託先にもNDA相当の義務を課すこと、再委託先の再々委託を禁止することを条項に含めます。
個人情報を扱う案件では、委託先が再委託する場合の同意・監督義務を別途確認します。
3. キックオフ前の確認チェックリスト
| 確認項目 | 記録先 |
|---|---|
| 受託者の実作業体制(社内のみか) | 台帳・契約メモ |
| 再委託条項の有無と例外範囲 | 契約書 |
| 納品物の作成者・レビュー者の明示 | 検収記録 |
| 請求書の振込先と契約当事者の一致 | 経理・台帳 |
請求書の振込先が契約当事者と異なる場合、実質的な孫請けや名義貸しの可能性があります。
差異があるときは、理由と再委託の有無を書面で確認します。
4. 進行中のモニタリング
4-1. 定例報告での確認
週次・隔週の進捗報告に「作業担当者名・所属」を含めるよう依頼します。
突然担当者が入れ替わった場合、再委託が発生していないか確認のメールを残します。
4-2. リポジトリ・ツールのアクセスログ
GitHubやFigmaなど、契約当事者以外のアカウントがコミット・編集していないか定期確認します。
外部ドメインのメールアドレスが招待されている場合は、再委託の事実確認と承諾記録を取ります。
4-3. 検収時の最終確認
検収承認前に「再委託の有無」「再委託先が契約条件を満たすか」をチェックリストで確認します。
検収基準の設計は検収基準の決め方をあわせて参照してください。
5. 再委託が判明したときの対応
5-1. 契約違反の整理
無断再委託が判明した場合、契約上の違反か、例外条項の範囲内かを整理します。
直ちに契約解除に至らない場合でも、今後の作業を社内完結に戻す旨を書面で求め、遵守を確認します。
5-2. 下請構造の書面化
承諾して継続する場合、再委託先との間でも取適法上必要な書面・支払条件が満たされているか、受託者経由で確認を求めます。
発注者が直接孫請けと契約し直す選択肢も検討材料になります(別契約として書面・台帳を新設)
よくある質問
Q. フリーランスが知人に一部作業を頼むのは再委託ですか?
契約上の定義によります。実質的に第三者が成果物を作っているなら再委託に該当し得ます。事前承諾条項の有無を確認してください。
Q. クラウドソーシング経由の発注は孫請けになりますか?
プラットフォーム上の表示者と実作業者が異なる場合、構造が二重になります。契約当事者と作業者の関係を発注前に確認します。
Q. 再委託禁止でもOSSの利用は問題ありませんか?
一般的なライブラリ利用と、業務の再委託は別です。ただしカスタム開発を外部に出す場合は再委託の対象になり得ます。
Q. 台帳に何を残すべきですか?
再委託の承諾日、再委託先名称、業務範囲、確認担当者を記録します。検収日とセットで保管します。
Q. 海外のオフショア先は再委託ですか?
受託者が海外法人に作業を回す場合も再委託に該当し得ます。データ越境・秘密保持を含め、承諾と記録が必要です。
6. 台帳運用とトリカク(torikaku)
6-1. 再委託確認欄の例
- 再委託条項(禁止/要承諾/承諾済み)
- 承諾日・承諾方法(メール/覚書)
- 再委託先の商号・業務範囲
- 最終確認日(四半期レビュー)
6-2. 発注コンプラ全体との連動
再委託の確認は、書面交付・60日以内支払と切り離せません。
入口のチェックリストは発注コンプラチェックリスト、支払期日は60日の起算も参照してください。
トリカク(torikaku)では、書面・受領日・期日の空欄を一覧化し、再委託確認メモと同じ案件フォルダで管理する運用が向いています。
7. 業種別の注意点
7-1. Web制作・デザイン
外注ライター・イラストレーターへの再委託は見えにくいです。
納品データのメタデータや共同編集履歴で実作者を確認し、契約上の再委託承諾と突合します。
7-2. システム開発
受託者がオフショアチームを使う場合、データの所在・バックアップ先・サポート時間帯を発注前に確認します。
セキュリティレビューで再委託先の有無を必須質問にすると、契約締結前に構造を把握しやすくなります。
7-3. 定期点検・保守
夜間監視を別ベンダーに委ねている受託者は、障害対応の責任分界を契約書に明記します。
孫請け先のSLA未達が一次受託者のSLAに影響する場合、連鎖関係を図示して台帳に保管します。
8. 四半期レビューの手順
取引先ごとに四半期1回、再委託確認欄を更新します。
①契約条項の再読 ②直近の請求書振込先 ③ツールのアクセスメンバー ④検収記録の担当者名を突合し、差異があれば確認メールを送付します。
レビュー結果は1行でもよいので台帳のメモ欄に残し、次回の起点にします。
8-2. 緊急時の暫定承諾
障害対応で再委託が必要になった場合、メールで範囲・期間・再委託先を限定承諾し、後日覚書に置き換えます。
暫定承諾の有効期限(例:30日)を明記し、期限後に継続するなら正式な契約変更を行います。
暫定承諾メールは台帳の再委託欄にリンクまたはファイル名で紐づけ、検索可能にします。
承諾の撤回や条件変更があった場合も、差分をメールで追記し、最新版の日付を台帳に記録します。
9. よくあるトラブルと予防
「知らないうちにフリーランスの知人がコードを書いていた」事例では、検収後に品質・秘密保持の問題が表面化します。
予防策として、リポジトリ招待は発注者承認制にし、初回コミット前にメンバー一覧を受託者へ提出させます。
再委託が常態化している取引先は、契約を再委託前提の価格・体制に見直すか、直接契約への切り替えを検討します。
切り替え時は、既存の秘密情報・個人情報の取扱いを新契約に引き継ぐ条項を必ず確認します。
再委託確認は発注コンプラの基本動作の一つとして、新規担当者への引き継ぎ資料にも含めておきます。
まとめ
- 再委託禁止か要承諾かを契約で明確にし、例外は書面で記録する
- キックオフ前と進行中に作業体制・ツールアクセスを確認する
- 無断再委託が判明したら契約違反の整理と今後の体制変更を書面化する
注意
本記事は取適法・フリーランス新法に関する一般的な情報の整理であり、法的助言ではありません。
個別の契約・再委託の適否は弁護士等の専門家にご確認ください。